<緊急報告>
昨日、5月19日、来日されていた故ケリー・サベジさんのお母様、マーサ・サベジさんも出席され、緊急の記者会見と報告会を開きました。
日本の子どもたちに英語教師として慕われていたケリー・サベジさん(享年27)が神奈川県内の精神科病院で身体拘束ののちに亡くなってから5月17日で一年となりました。命日にあたるこの日、マーサさんは、厚生労働省を訪れ、安倍首相、加藤厚労大臣に対して6010人の署名とともに、以下の5項目の要請をしています。
1.精神科病院内において、長時間(24時間以上)の身体拘束を禁止すること。
2.精神科病院内において、身体拘束による人権侵害が起きていないかを早急に調査すること。
3.精神科医療における身体拘束による人権侵害や死亡が起きることがないように、精神医療の現場において、身体拘束の実施過程を録画などで可視化し、実施後に検証できるように14日間以内に患者本人もしくは遺族に公開すること。
4.身体拘束の実施人数の縮減し、実施期間の圧縮が図られるよう、目標値を設置し、実現向けて政府としてリーダシップを発揮すること。
5.患者、遺族への診療情報の提供については、厚生労働省の「診療情報の提供の指針」に基づき、情報の開示がなされるよう、病院に対し強力に指導すること。
また、5月17日には、14歳のときに摂食障害で入院した病院で、77日間身体拘束をされた女性が、精神的な苦痛を受けその後PTSDになったとして東京地裁に提訴しました。
19日に開いた会では、このほかに、2年前に都内の病院で身体拘束ののちに肺塞栓症で亡くなった女性の妹さん、大学病院で不当に身体拘束をされていた男性、医療観察病棟で長期にわたって身体拘束をされていた男性のお母様なども発言もあり、問題の大きさが浮き彫りになりました。
精神科医の斎藤環氏は、精神医療の課題として構造的な問題があるとして、“適切に拘束している”と医療関係者はいうが濫用がなされても罰則がないことが問題と指摘、さらに「患者さんの暴力から守るため、というが、暴力は精神症状ではなく、周りに危険を感じた場合の対処の形であることを認識すべき」「人間の自由・尊厳を尊重することこそが治療的態度である」と話されました。
また、弁護士の三枝恵真氏は、「患者に対する身体拘束は原則として違法であり、違法性阻却事由を満たす場合に限定的に許容される」ことを確認すべき、と主張されました。
佐々木信夫弁護士からは「考える会」としては、実際に身体拘束を受けて苦しんでいる当事者と共に状況を変えるために積極的に活動していくことが述べられました。
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今年は、日本の精神医学の祖である呉秀三(くれしゅうぞう)が、精神疾患のある人たちの私宅監置の現状を調査し、“この国に生まれたるの不幸”と述べたときからちょうど100年にあたります。大阪の寝屋川の長女監禁死亡事件の報道にふれて、家族による隔離の状態がまだ続いていることに戦慄をおぼえました。身体拘束も含め、精神疾患の人たちがおかれている状況が今も変わらず、人権という視点がないことに憤りを感じます。これまで精神医療の課題については、大熊一夫氏の「ルポ・精神病棟」(1973)をはじめとして、繰り返し指摘されてきました。今、この時に、変革をしないと後世に大きな禍根を残します。当事者、医療者、ほか皆さまと一緒に精神科医療をよりよい方向にすすめなければ、と年頭にあたり決意しました。
メディアで取り上げられました
◎朝日新聞
11月19日から4回シリーズで、日曜版に特集として「身体拘束」がとりあげられました。
①身体拘束 医療・福祉の現場の実情は?
https://www.asahi.com/articles/ASKCM2JHHKCMUBQU007.html
②「病院のすることか」叫ぶ患者 身体拘束「納得」4%
https://www.asahi.com/articles/ASKCR71Y3KCRUPQJ00F.html
③身体拘束 一歩ずつ、拘束ゼロへの取り組み
https://www.asahi.com/articles/SDI201712108882.html
④身体拘束 アンケート結果
http://www.asahi.com/opinion/forum/063/?mode=result1
全文、ネットで読めます。現状、体験者のアンケート、なくすための取り組みなど、詳細な報告です。(第3回には、代表の長谷川のインタビューが載っています。「身体拘束の過程の録画・公表」する可視化のシステムの構築を訴えました)
◎NHKハートネットTV
12月12日放送「ある青年の死」(NHKのページ)
https://youtu.be/21AzmodMUHQ(動画)
精神科病院で職員から暴行を受けたあと亡くなった青年の死をめぐる経緯のなかで、身体拘束について伝えていました。
◎NHKクローズアップ現代+
1月11日放送「認知症でしばられる!?~急増・病院での身体拘束~」(テキスト化されたページ)
http://dai.ly/x6d0aen(動画)
現状、医療現場の苦悩、身体拘束後に亡くなった女性の話、どうすれば減らせるか、認知症を地域で支える取り組みなど、盛りだくさんの内容となっています。
<会の動き> (会報第1号発行後)
○ 10月28日 地域精神保健福祉機構(COMHBO)が主催した「身体拘束は必要ですか?」 というテーマの こんぼ亭第44回月例会に長谷川が参加しました。COMHBOが行った身体拘束に関するアンケートが公表されています。詳細は次のサイトで。 https://www.comhbo.net/?page_id=15538
〇 11月13日 厚労省記者クラブで記者会見を開きました。厚生労働科学研究「精神病床における隔離・拘束に関する大規模調査」に疑問があったからです。まず実態を把握して、それから精神科医療をよりよいものにするために抜本的な改革の方向などを議論すべきだと考えます。現状追認というようなことはあってはなりません。(これに関しては、少し良い方向に動き出したと認識しています)
〇 会によせられた死亡事例について、一件ずつ詳細を確認する作業を始めています。いずれご報告できることもあるかと思います。
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(様々な情報、相談をお待ちしています。長谷川までご連絡ください。一緒に考えましょう!)
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2017年7月19日に、記者会見を開いてから3カ月がたちました。
この間に様々な当事者、家族の方からご連絡をいただきました。そして働きかけをしてきました。
皆さまと共有するためにご報告します。
身体拘束後の死亡事例 8例に!
これまでに会として把握している事例が8例となりました。記者会見でお伝えしたケリー・サベジさん(28歳男性)と、千葉さん(40歳男性)のほか、6人の方が、精神科病院で身体拘束されたあとに亡くなっています。50歳女性(東京・双極性障害)、40歳男性(統合失調症)は、去年の死亡例。いずれも肺塞栓症で亡くなったという診断が出ています。今年6月に亡くなった50歳の女性、去年暮れに亡くなった24歳の男性、詳細の把握はこれからですが、いずれも精神科病院で拘束されたあと亡くなったということです。さらに、訴訟中の事例が2例あることがわかりました。いずれも平成25年に亡くなられた事例で、関西・関東で1例ずつです。
これほどの方が亡くなっていて、何も対策がとられていません。医療界、国は早急に対応すべきです。
また、医療関係者などからの、現場でのひどい身体拘束の実態の話も多く寄せられています。
<会の動き>
●8月9日、厚労省に、身体拘束の問題について申し入れをしました。(長谷川代表、佐々木信夫弁護士、全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)、全国精障害者地域生活支援協議会(あみ)、全国精神病者集団、が同行)。
●9月26日には、再度、厚労省にケリー・サベジさんのお兄さんも一緒に、当該病院に対して指導するよう申し入れをしました。(今回は日本精神保健福祉士協会も同行)。会として、身体拘束の期間を24時間に限定すること、などいくつかの要望事項を伝えました。
●9月22日 息子が医療観察法病棟で3ヶ月身体拘束を受け続けているというお母様からの相談を受け、同院を訪問、主治医と面談、ご本人ともお会いしてきました。厳しい交渉を経て、今は身体拘束が解除され、退院を目指して動いています。
●10月13日 ケリーさんが身体拘束されていた精神科病院を指導監督する立場にある神奈川県がん疾病対策課に申し入れをしました。当該病院への実地指導だけでなく他の病院に対しても、抜き打ちの立ち入り検査、結果の公表を要請しました。
現在、厚生労働科学研究として、「精神科病床における隔離・拘束に関する大規模調査」が行われています。しかしそもそもこの調査内容は一切公開されていません。9月に入って、日本精神科病院協会が「同調査に協力しない」という文書を全会員病院に通知するという動きもあったようです。見えない所でいったい何が起こっているのでしょうか?その過程も含めて国は情報を公開し、調査が歪められることがないようにしなければならないと思います。
(様々な情報、相談をお待ちしています。長谷川までご連絡ください。一緒に考えましょう!)
精神科医療の身体拘束を考える会 長谷川利夫 携帯電話:090-4616-5521
E-mail:hasegawat@ks.kyorin-u.ac.jp